『星野リゾートの教科書』中沢康彦

星野リゾートの4代目社長、星野佳路氏の事業戦略、事業運営、マネジメントに関する考え方が実際の星野リゾートにおけるケーススタディとともにまとめられている一冊。

星野リゾートとは

株式会社星野リゾート(ほしのリゾート)は、本社を長野県北佐久郡軽井沢町におく総合リゾート運営会社。経営不振に陥ったリゾート施設や旅館の再生で知られる。Wikiペディアより
http://hoshinoresort.com/

ちょっと話は横道にそれますが、私は個人的に、経済小説や仕事の現場を題材にした小説が好きです。真山仁著の『ハゲタカ』シリーズや『マグマ』。荻原浩著の『オロロ畑でつかまえて』(これはちょとコメディ要素が強いか…)。今話題の池井戸潤著の『鉄の骨』。

こういう題材が好きなのは単純な話、自分も仕事をしているので、物語に入り込みやすいのと、小説でありながらも勉強になるからです。この手の小説は、専門用語も多く著者も実際にビジネスを経験した上で、小説家になっている場合がほとんどなので、難しい経済の話を、物語と一緒に楽しみながら理解できるという利点もあります。

<私が考える経済小説の鉄板の構造>
・旧来の構造、しがらみ
・それに疑問を感じる主人公
・それに立ち向かい、課題を1つ1つクリアする主人公
・それを阻む業界の重鎮
・それを乗り越え新しい仕組みを作り出す

最近気づいたのは、こういった小説や読み物と同様に、今回の『星野リゾートの教科書』のような実際の経営者の著作にも、上記のような小説と同じ要素があるという点です。勉強しよう、学ぼう、と考えると疲れてしまうので、単純に読み物として面白いから読むくらいのテンションで、今後もこういったものに触れて行こうと思いました。

教科書に、忠実に

「教科書通り」という言葉に皆様どういうイメージをもたれますでしょうか?

・応用が利かない。
・まじめ。
・面白みに欠ける。

個人の創造性が重視されるようになって来た今の時代においては、教科書通りという言葉は、ネガティブに聞こえてしまうかもしれません。

星野リゾートを、自分の代で軽井沢の老舗旅館から全国でリゾートを運営し次々と革新的なサービスを生み出す一大リゾート企業に育て上げた星野佳路氏のモットーは意外にも「教科書に忠実である事」。

星野氏は、経営課題にぶつかったときには、必ずその課題を解決するための「教科書」を探し出しそれに忠実に施策を考え、実行するとの事でした。その理由は、自分の感覚やセンスに頼るよりも、先人達が作り上げ、多くの人が実践して来た理論に忠実である事の方が、より確実性が高いからだと言う事。また、体系化されているため打った施策の評価が出来るのも、利点の1つです。

本書では、星野リゾートのケーススタディを星野氏が参考にしたビジネス理論の著作紹介と合わせて記されています。有名なビジネスの理論を、実際の経営者がどのように事業に用いているのかがとても分かりやすく紹介されています。

自分に経験や、知識の裏付けの無い場合に、感覚やセンスに頼りたくなるのは単なる「逃げ」何だと、本書を読んで痛感しました。

・勤勉である事。
・学んだ事を実行し続ける事。
・ちゃんと評価する事。
・改善し続ける事。

奇をてらう訳ではなく、上記のような事をちゃんと続けるのが一番難しくもあり、成長につながる近道なのだと考えさせられた次第です。