価値を正しく伝える「ぽっくり物件.com」

やっとみつけた!これは掘り出し物だ!間取りもいいし、広いし安い!
ちょっと待てよ、、、事故物件なんじゃ・・・。

賃貸を探していてこんな考えが頭をよぎった経験はだれにでもあると思います。ここで言う事故物件とは、何らかの理由で前住居者が亡くなられた物件のことを指します。

今回はこの「事故物件」というキーワードに真正面から挑むサービスを紹介します。その名も「ぽっくり物件.com」事故物件との明確な違いは、その死因を自然死に限定していることです。

ぽっくり物件.com

・WEBサイト:http://pokkuri.site/
・サービス概要:前居住者が自然死した物件を集めた不動産サイト(2019/3月公開)
・メリット:通常の賃貸よりも割安、リフォーム済、最期まで住みたかった部屋であるという事

出典「ぽっくり物件.com」

※本当にその人が望む最期だったか?という所まで言及してしまうとキリ無いのと、それはその当事者にしかわからない事なので深掘りしません。

事故じゃない「最期まで住みたかった部屋」

本質をついた言葉の発明が、このサービスのすべてだと感じました。「確かに」と思わずつぶやいてしまう程に、事故物件という言葉に覆われて見ようとしていなかった、その物件の本質を現していると思います。

日本には、昔から「終の棲家」という言葉があって、誰しもエンディングを迎える場所や家というものが存在します。私の中だと「終の棲家」はポジティブなイメージです。というか、ポジティブなものにするために今を生きています。

そんな誰かの「終の棲家」。重たく感じる人もそれなりにいると思いますが、事故物件という一言に括られるよりは圧倒的に需要があるのでは無いでしょうか。

カテゴライズの弊害とこれからの不動産情報のあり方

ポータルサイト側の問題

「最期まで住みたい物件」

この言葉を聞いた時に、今の不動産ポータルサイトの課題のようなものを感じました。検索性重視で、物件の本当の価値が見えづらくなっている点です。

膨大な情報量から、好みの物件を探しやすくするために、カテゴリが作られます。そのカテゴリは、データに基づき多くの人が求める条件に合わせて作られます(南向き、バス・トイレ別等)。そうなると、当然物件は探しやすくなりますが、「その枠組からでしか探せなくなる」というデメリットにはあまり気づきません。

ぽっくり物件.comに掲載されるような物件は当然はみ出ることになります。

この条件を今の不動産ポータルサイトに搭載しようとすると以下のような条件指定になるでしょうか。

▼ 前居住者情報
□ 特に無し
☑ 自然死
□ 自死
□ 他殺

すでに他の条件が膨大に設定されているので、それらと並列に考えるとどうしても上記の様な用語での表現にならざるをえません(自然死だけぽっくりと書く柔軟性があっても良い気はしますが)。

また条件を追加することで、「設定の必要性」も出てくるため導入自体がハードル(掲載者が嫌がる?)の高いものとなり、大手のポータルサイトだとなかなか勇気のいる決断になると思います。

利用者のニーズ

ポータルサイトを使って、便利に希望に近い物件を探したいというニーズも当然あります。そちらのほうが大多数だと思います。

しかし一方で、ぽっくり物件.comにあるような物件に安く住みたいと言ったニーズに応えられないというのも事実です。もしくは、すでにあるニーズに応えるのではなくて、あたらし価値に気づかせる事も今後の不動産情報の提供においては重要な事だと感じました。

ニッチだけど新しい価値を提供する不動産サービス例
・改装可能物件だけを集めた「DIYP
・自然死物件だけを集めた「ぽっくり物件.com
・風呂なし物件を集めた「東京銭湯ふ動産
・ウォーターフロント物件を集めた「水辺不動産

不動産に潜在する価値をえぐり出して束ねるようなサービスがどんどん増えてくると、もっと暮らしは楽しくなるし、「価値がある」とされることの裾野が広がるため、空き家になるような物件の価値も高まると感じました。